カテゴリ:Going the Distance( 21 )
切り割り
だいぶご無沙汰してしまいました。

ニブ製作は今週より量産2ロット目に入りました。

修理用の切り割りマシンは生産性が悪いため、

新たに切り割り機を製作。

セットすれば誰でも難しい切り割りが可能になりました。

これまではチップにカッターをグイグイと押し当ててきたのですが

はさみで切るような感じといったら言いのか、

カッターを回転させるような動きで切ります。

常にカッターが違う部分を切って行くため、切削抵抗が小さくなり

カッターの寿命とカッティング時間を短縮できより生産性を

向上させることが出来ました。

こちらがその動画です。

課題は、ハート穴のセンターを合わせるのが難しくなることです。

特にほんとうのハート型はずれるとすぐにわかってしまうので神経を使います。

切り割りシーンをご覧下さい。


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by pencluster | 2015-07-01 19:56 | Going the Distance
ペンポイント溶着
万年筆のペン先は摩耗しにくいプラチナ族の硬い合金が溶接されている。

これらは金との相性が大変良いので金を溶かして接触させるだけで

簡単についてしまう。

一見、ペンポイントが溶けていると思われがちだが融点が1000℃位さがあるので

ただ金にくるまれているだけ。これを溶着と呼んでいる。

方法は3つほどあって、一つはロー付け。

低融点の金合金をボールチップとペン先のすき間に溶かし込んで着ける方法。所謂半田付け。

これはペン先が鈍りやすく余り好ましくない。多くのジュエラーや修理職人が使用する方法。

もう一つは久保工業所が開発したアーク溶着。

私がお邪魔した当初は電源が古く、何とか作ってくれないかということで

装置メーカーと共同で作成してあげた。

修理はこれかロー付けでないと難しい。

しかし、この方法は熟練を要し生産性が悪くニブの量産には向かない。

ということで、一般的に万年筆メーカーが採用している抵抗溶接の機械を製作した。

ポイントはチップを押し当てるジグでこれを上手くやらないと電源だけでは

溶着は出来ない。まだまだ改良しなければならない点はあるが

ボタン一つでこのように簡単に溶着ができる。


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by pencluster | 2014-11-11 10:38 | Going the Distance
ペンポイント (その2)
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溶着に行く前に、ペンポイントのチップの大きさのバリエーションを少し紹介しましょう。

だいたい、大きさとしては0.3mmから1.8mmくらいまでが普通。

昔は、EFには0.5mm以下のチップを溶着したりする会社もあったようだが

ほとんどは狙いのニブサイズより大きなものを溶着して削り出していくことが多い。

小さいほど溶着とそのあとの切り割りが非常に難しい。

ニブになってからの研磨も難しくなる。

また、大量生産で多くの材料を必要とする場合は小さい方が100g当たりの単価が

高くなるので、今では殆どのメーカーが1mm弱のチップから削り出す。

当社も生産数が少なく手作業に近い生産手法なのでので大きなものから削り出していくが

小さい玉のほうが組織がより緻密で硬いのだ。

よく、大きな字幅のものからEFに研ぎ出したりするチューニングが行われるが

大きなポイントほど内部に巣(空孔)が出来やすく質の悪い組織が表面に出てくるので

リスクも伴うことを忘れないでいただきたい。適材適所が基本である。
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by pencluster | 2014-10-20 21:50 | Going the Distance
ペンポイント
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これは万年筆のペン先の一番先端に着いてるペンポイントの素材。

チップ、アロイチップなどともいう。慣例からイリジウムと呼んでしまうこともある。

これまではイリドスミンというイリジウムとオスミウムの合金が使われていた。

産地が限定されていて微妙に配合が異なる。

精錬ではなく鉱物をほぼそのまま使用していた。だから産地で配合が異なる。

砂金のような鉱物を砕いてアークやプラズマで溶かして丸めて玉を作る。

ペン先には「溶着」という方法で付けていた。

なぜ、産出されていたものそのままかというとイリジウムなど白金族は融点が3000度

ほどなのでるつぼで昔は各元素を分離するのが難しく配合で作ることがすることが困難だったから。

もしかしたら今でも精錬はしていないかも知れない。

今ではるつぼでも配合は可能なはずである。

しかし、今はイリジウム合金はペンポイントに使われていない。

ヨーロッパではオスミウムは有害物質に指定されたため

使用が出来なくなったのだ。なぜかというのオスミウムはその名の通り

溶解すると臭い。そのガスが発がん性を持っていることがわかったため

排気設備に非常なコストがかかり使用されなくなった。10年ほど前だ。

その、代わりの登場したのがルテニウムータングステン合金。

性能に遜色はない。が、オスミウムリッチのイリドスミン等と比べると柔らかい。

硬ければ良いというものではないが。

と言うわけで一部のメーカー以外はモンブランもペリカンもイリジウムは使用していない。

「イリジウム」って言いたいために少量入れているところもあるそうだが

オスミウムが入っていなければ性能には寄与しない。只の不純物だ。

このペンポイント、チップともボールとも言われる素材は今では

独ヘレウス社と日本のパイロットだけと聞いている。

ちょっと前まではシェーファーも作っていた。

ロットが多量なので買うのが大変だが今回はアメリカの同業者から譲っていただいた。

海外の同業者は大変協力的で困っていると積極的に手助けしていただけるので大変ありがたい。

次回はいよいよ溶着だ。
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by pencluster | 2014-09-18 18:16 | Going the Distance
ペンの形にする(その2)
昔、久保工業所の久保さんに「修理で失敗することはあるのですか?」

と聞いたことがある。

「そんなことしょっちゅうだ。そりゃあ、がっくり来るよ。でもね、只じゃ起きないのが職人さ」

とニコニコしながら答えられた。

今回の問題にぶつかったときふと思い出した言葉だ。

クリアランスの問題を無かったことにしちまえば・・・。

パッとひらめいた。

「〇〇〇ありますか?」それを早速取り寄せた。

どこにでもあるようなものだが、久保さんのところで見たことがある。

上手く行くはず。。。

だれもが半信半疑。

「こんなの使うの??どうやってやるの~」

「いいから、言うとおりにお願いします」と私。

「上手く行くの?ほんとに~?」

「上手く行かなかったらまた考えましょう」

そして、材料をセットしてプレス。

すると、、、「あれ、ほんとだ、出来てるじゃない!えーっどこで覚えたのこんなの?」

「いえ、思いつきですよ。やってみなきゃわからないですよ。」

このようにして、漸くペンの形が出来上がった。


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by pencluster | 2014-09-12 23:17 | Going the Distance
ペンの形にする
ニブは一枚板でまさにプレス向きの形をしている。

金は柔らかいし、簡単に成形できると思っていたのが甘かった。

圧延後は硬くなっているのでびんびんにバネが利いている。

久保さんは「あぶればいいんだよ」と言われるが、

せっかく圧延した強度が下がってしまうのはいただけない。

まずは、金型。

差厚圧延で0.2から0,4mmn勾配を持った素材を金型に密着させなければならない。

とんでもないことに社員は最初はオス形無しで作ろうとしていた。

ここでは書かないがこの方法は確かに板厚差ををキャンセル出来るが

形状凍結性に著しく欠ける。18kの圧延された素材のスプリングバックも

考慮に入れなければならない。金型で材料をつぶすくらい密着させる必要がある。

それくらい加圧しないとニブの微妙な曲面は作れない。

結局、オス型を作る歯目になり多くの時間をロスしてしまった。

時間は非常に重要である。まさに時は金なり。

顧客に断りを入れるしかなかった。

戦略的にこの12号サイズを選んだ意味も薄れてしまった。

そこで、体制を一新しベテランも加入してもらって出来たオス型がこれだ。

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さすがである。ベテランが加入して見違えるツールが出来た。

昔はそれこそ手作業でペン先の3次元曲面を板厚の勾配を考慮して作っていたのだ。

こんなちっちゃなペン先でも学ぶべきことはたくさんある。

金型がきちんと勾配を持っているクリアランスになっているのかどうやって確認するのか?

これ一つとってもまともに考えることが出来ない。

さぁ、困ったぞ。
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by pencluster | 2014-09-05 09:56 | Going the Distance
刻印を打つ
本当のオリジナル万年筆には独自デザインの刻印が必要だ。

胴軸だけ挽いてニブを買ってきて付けて「オリジナル」というのはちょっとさみしい。

もう、かなり前からあるデザイナーにお願いしてあったデザインを

形にすることが出来る瞬間がこの「刻印」という工程。

ついにというかやっとお目にかけられる。

刻印の原理はお金の刻印と同じ。コイニングとも言う。

金型に凹凸を刻みそれをワークに押しつけることで模様を転写する。

これがその金型だ。もちろんパターンは反転してある。

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ロゴのデザインモチーフは私の家紋。

違い鷹の家紋をシンプルにデザインした。

違い鷹は偶然にも師匠の久保さんと同じ家紋。

羽は万年筆のルーツでもある。

良いロゴが出来て良かった。デザイナーにはとても感謝しています。

刻印の工程字体は非常にシンプルで、ワークを金型にセットしてプレスする。



出来たワークがこちら。このあといよいよペンの成形加工に入る。

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by pencluster | 2014-08-11 00:17 | Going the Distance
ハート穴を開ける
万年筆にはハート穴と言われる穴がペン先のスリットの付け根にある。

ここが空気穴と言う人がいるがそれはまぁ間違いと言わないが本来の目的では無い。

本当の理由はスリット付け根の応力集中を緩和するため。

線上のスリットは理論上応力集中は無限大になり破損の原因になる。

実際は理論値より低い値だが許容応力は簡単に超えてしまう。

そこで穴を開けスリットに発生する応力を緩和させる。

形は円形が最も応力を下げやすいが、昔からハート穴に開けるのが伝統。

古いモンブランのニブ然り。その名の通りハートで。

デザイン的にも遊び心が感じられわくわくするでしょう?

というわけで、我々のニブもハート穴で設計されたが、技術サイドが「できない」と言ってきた。

なぜできないかは説明しない。要するにやったことが無いことはできないということらしい。

ハートの尖ったところが難しいということらしい。

ペン先作りを始めるに当たって素人集団であることが要件であったが、

ネガの部分がでてしまったようだ。

「わかりました。では、伺いますが、このモンブランは90年前のものです。

ハート穴が開いてますね?

90年前の職人ができて、なぜ今より技術が進んだあなたがたができないのでしょう?

私は成功した姿もみたいけど失敗した姿も見てみたい。もとより勉強ですから。

ハートがスペードでもおにぎりになってもいいから」

職人とエンジニアは黙ってしまった。当時はコンピュータすら無かったのである。NCもない。

2週間後、準備が出来たと連絡があるので行ってみると、

ハート穴の金型が出来上がっていた。

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90年前のモンブランより素晴らしいと思う。良い形。やれば出来る。証明してくれました。

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打ち抜きかすもハート!これも何かに使いたい。

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一瞬にして打ち抜く。一瞬にして-ハートが一つになる瞬間だ。

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by pencluster | 2014-08-05 23:18 | Going the Distance
ペン先形にブランクを打ち抜く
我々がこの開発をスタートするにあたり一つ決めたことがある。

それは開発チームにペン先を作った経験のある人を入れないこと。

理由は固定観念に縛られない物作りがしたかったことと、

未経験のペン先作りを通して下町工場のレベルを引き上げたかったから。

もちろん、基本的な技術は久保工業所の久保さんと勉強させていただいた。

久保工業所の「使いにくい」と言われているイリジウム溶着機を作ったのは我々でした(笑)

今は師弟で競争してる感じです。

この辺りからペン先らしくなってくる。鋼材をワイヤーカットし抜き型を作る。

カタチは前回の検討したもの。

これが金型です。

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たくさん作らなければ、シャーとグラインダーで充分ですが、

そう暇でもないので思い切って金型を起こしました。

打ち抜いたブランクがこれ。

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このあと、ハート穴を抜きます。

打ち抜きシーンはこちら。

一瞬です。


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by pencluster | 2014-07-31 19:34 | Going the Distance
圧延上がりのブランク
金は非常に延性(切れずに伸びる性能)が非常に高く、

1gの金は0.005mmの径だと3000m伸びると言われている。

だからニブの地金を延ばすなど簡単と思わえるが実はそれは純金の話。

ペン先用のAu合金は強度(硬度)を上げるために銅や銀を配合している。

また、板にするまでには何度も圧延され非常に硬くなってしまう。

硬い=強度が高い=伸びない、と言うことになって伸ばして行くには

非常に多くの力と加工の技術が必要になる。

その為、我々の華奢な設備では18金といえども少しずつしかつぶせないため

一回のパス(圧延)では所定の厚みに圧延することは難しかった。

1日に何万個も作るのに適した製法ではあるが、裏を返せば

1パスにこだわる必要も無く、少しずつ薄くしていけば問題はないはず。

写真は出来上がったニブのブランク。

このあと、ペンの形に打ち抜かれていく。

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by pencluster | 2014-07-27 10:05 | Going the Distance



こだわりの美麗ヴィンテージ万年筆を中心に少々深堀してご紹介していきたいと思います。
by pencluster
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