ペンの形にする(その2)
昔、久保工業所の久保さんに「修理で失敗することはあるのですか?」

と聞いたことがある。

「そんなことしょっちゅうだ。そりゃあ、がっくり来るよ。でもね、只じゃ起きないのが職人さ」

とニコニコしながら答えられた。

今回の問題にぶつかったときふと思い出した言葉だ。

クリアランスの問題を無かったことにしちまえば・・・。

パッとひらめいた。

「〇〇〇ありますか?」それを早速取り寄せた。

どこにでもあるようなものだが、久保さんのところで見たことがある。

上手く行くはず。。。

だれもが半信半疑。

「こんなの使うの??どうやってやるの~」

「いいから、言うとおりにお願いします」と私。

「上手く行くの?ほんとに~?」

「上手く行かなかったらまた考えましょう」

そして、材料をセットしてプレス。

すると、、、「あれ、ほんとだ、出来てるじゃない!えーっどこで覚えたのこんなの?」

「いえ、思いつきですよ。やってみなきゃわからないですよ。」

このようにして、漸くペンの形が出来上がった。


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# by pencluster | 2014-09-12 23:17 | Going the Distance
ペンの形にする
ニブは一枚板でまさにプレス向きの形をしている。

金は柔らかいし、簡単に成形できると思っていたのが甘かった。

圧延後は硬くなっているのでびんびんにバネが利いている。

久保さんは「あぶればいいんだよ」と言われるが、

せっかく圧延した強度が下がってしまうのはいただけない。

まずは、金型。

差厚圧延で0.2から0,4mmn勾配を持った素材を金型に密着させなければならない。

とんでもないことに社員は最初はオス形無しで作ろうとしていた。

ここでは書かないがこの方法は確かに板厚差ををキャンセル出来るが

形状凍結性に著しく欠ける。18kの圧延された素材のスプリングバックも

考慮に入れなければならない。金型で材料をつぶすくらい密着させる必要がある。

それくらい加圧しないとニブの微妙な曲面は作れない。

結局、オス型を作る歯目になり多くの時間をロスしてしまった。

時間は非常に重要である。まさに時は金なり。

顧客に断りを入れるしかなかった。

戦略的にこの12号サイズを選んだ意味も薄れてしまった。

そこで、体制を一新しベテランも加入してもらって出来たオス型がこれだ。

b0215343_95669.jpg


さすがである。ベテランが加入して見違えるツールが出来た。

昔はそれこそ手作業でペン先の3次元曲面を板厚の勾配を考慮して作っていたのだ。

こんなちっちゃなペン先でも学ぶべきことはたくさんある。

金型がきちんと勾配を持っているクリアランスになっているのかどうやって確認するのか?

これ一つとってもまともに考えることが出来ない。

さぁ、困ったぞ。
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# by pencluster | 2014-09-05 09:56 | Going the Distance
刻印を打つ
本当のオリジナル万年筆には独自デザインの刻印が必要だ。

胴軸だけ挽いてニブを買ってきて付けて「オリジナル」というのはちょっとさみしい。

もう、かなり前からあるデザイナーにお願いしてあったデザインを

形にすることが出来る瞬間がこの「刻印」という工程。

ついにというかやっとお目にかけられる。

刻印の原理はお金の刻印と同じ。コイニングとも言う。

金型に凹凸を刻みそれをワークに押しつけることで模様を転写する。

これがその金型だ。もちろんパターンは反転してある。

b0215343_0153050.jpg


ロゴのデザインモチーフは私の家紋。

違い鷹の家紋をシンプルにデザインした。

違い鷹は偶然にも師匠の久保さんと同じ家紋。

羽は万年筆のルーツでもある。

良いロゴが出来て良かった。デザイナーにはとても感謝しています。

刻印の工程字体は非常にシンプルで、ワークを金型にセットしてプレスする。



出来たワークがこちら。このあといよいよペンの成形加工に入る。

b0215343_0175897.jpg

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# by pencluster | 2014-08-11 00:17 | Going the Distance
ハート穴を開ける
万年筆にはハート穴と言われる穴がペン先のスリットの付け根にある。

ここが空気穴と言う人がいるがそれはまぁ間違いと言わないが本来の目的では無い。

本当の理由はスリット付け根の応力集中を緩和するため。

線上のスリットは理論上応力集中は無限大になり破損の原因になる。

実際は理論値より低い値だが許容応力は簡単に超えてしまう。

そこで穴を開けスリットに発生する応力を緩和させる。

形は円形が最も応力を下げやすいが、昔からハート穴に開けるのが伝統。

古いモンブランのニブ然り。その名の通りハートで。

デザイン的にも遊び心が感じられわくわくするでしょう?

というわけで、我々のニブもハート穴で設計されたが、技術サイドが「できない」と言ってきた。

なぜできないかは説明しない。要するにやったことが無いことはできないということらしい。

ハートの尖ったところが難しいということらしい。

ペン先作りを始めるに当たって素人集団であることが要件であったが、

ネガの部分がでてしまったようだ。

「わかりました。では、伺いますが、このモンブランは90年前のものです。

ハート穴が開いてますね?

90年前の職人ができて、なぜ今より技術が進んだあなたがたができないのでしょう?

私は成功した姿もみたいけど失敗した姿も見てみたい。もとより勉強ですから。

ハートがスペードでもおにぎりになってもいいから」

職人とエンジニアは黙ってしまった。当時はコンピュータすら無かったのである。NCもない。

2週間後、準備が出来たと連絡があるので行ってみると、

ハート穴の金型が出来上がっていた。

b0215343_23183230.jpg


90年前のモンブランより素晴らしいと思う。良い形。やれば出来る。証明してくれました。

b0215343_2354026.jpg


打ち抜きかすもハート!これも何かに使いたい。

b0215343_2371585.jpg


一瞬にして打ち抜く。一瞬にして-ハートが一つになる瞬間だ。

b0215343_23145145.jpg

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# by pencluster | 2014-08-05 23:18 | Going the Distance
ペン先形にブランクを打ち抜く
我々がこの開発をスタートするにあたり一つ決めたことがある。

それは開発チームにペン先を作った経験のある人を入れないこと。

理由は固定観念に縛られない物作りがしたかったことと、

未経験のペン先作りを通して下町工場のレベルを引き上げたかったから。

もちろん、基本的な技術は久保工業所の久保さんと勉強させていただいた。

久保工業所の「使いにくい」と言われているイリジウム溶着機を作ったのは我々でした(笑)

今は師弟で競争してる感じです。

この辺りからペン先らしくなってくる。鋼材をワイヤーカットし抜き型を作る。

カタチは前回の検討したもの。

これが金型です。

b0215343_19283054.jpg


たくさん作らなければ、シャーとグラインダーで充分ですが、

そう暇でもないので思い切って金型を起こしました。

打ち抜いたブランクがこれ。

b0215343_19313663.jpg


このあと、ハート穴を抜きます。

打ち抜きシーンはこちら。

一瞬です。


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# by pencluster | 2014-07-31 19:34 | Going the Distance



こだわりの美麗ヴィンテージ万年筆を中心に少々深堀してご紹介していきたいと思います。
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